フランスで商品を委託販売する |店に置いてもらう仕組みと始め方
海外の店に自分の商品を「置いてもらう」。そう考えたとき、多くの方が思い浮かべるのは、店に買い取ってもらう形かもしれません。けれど実際には、初めての相手にいきなり買取で仕入れてもらえることは稀です。まずは商品を預けて、店頭での反応を見るところから始まる——これが海外販路の、いちばん現実的な入口です。その入口が委託販売です。パリで実際にいくつかの商品を委託販売してきた経験をもとに、その仕組みと始め方を整理します。
01OVERVIEW委託販売とは、在庫リスクを店に負わせない売り方
まず、委託販売と買取の違いを、いちばん丁寧にお話しします。ここを取り違えると、その後の話が全部ずれてしまうからです。
買取は、店がこちらから商品を仕入れて、自分の在庫として持つ形です。支払いは仕入れの時点で発生します。店からすれば、仕入れた瞬間にお金が出ていき、売れ残れば自分の損になる。つまり在庫リスクは、買い取った店側が負います。
委託販売は、こちらが商品を店に預ける形です。所有権は、売れるまでこちら側に残ります。店は「預かって並べる」だけなので、仕入れの時点ではお金が動きません。売れて初めて、その分の卸値を店からこちらに支払ってもらう。売れ残ったぶんの在庫リスクは、預けたこちら側が持つことになります。
この違いが、なぜ入口として効くのか。実績のない海外の商品を、店がいきなり買い取るのは勇気がいります。売れなければ丸損だからです。けれど委託なら、店は「売れた分だけ払えばいい」ので、リスクがほとんどありません。だから「まず置いてみましょう」と言ってもらいやすい。委託販売は、店側の「売れなかったらどうしよう」という不安を先に取り除いてあげる売り方なのです。
在庫リスクをこちらが引き受けるぶん、最初の一歩を軽くする。ここが、委託販売という入口のいちばんの勘所です。
02WHATどう始まるか — まずサンプルを置いて、反応を見る
では、実際にどう始まるのか。だいたいは、サンプルを1〜2点、店頭に置くところからです。
私たちがパリのギャラリーである書道家の作品を扱ってもらったときも、そうでした。オーナーからの提案は、「まず1点、店に飾って、お客さんの反応を見てみよう」というものでした。実際には、こちらが手持ちのサンプルを持参して選んでもらう形になり、2点を預けるところからのスタートになりました。
いきなり数十点をまとめて置く、という話ではありません。1〜2点を店頭に並べて、お客さんがどう反応するかを見る。売れそうだという手応えが出てから、点数を増やしたり、次の展開に進んだりする。この「小さく預けて、反応を見る」という始め方が、委託販売の自然な入口です。
作り手からすると、たった1〜2点かと思うかもしれません。けれど、現地の店頭に自分の商品が並び、実際のお客さんの反応が返ってくる——この一次情報は、何より価値があります。数を置くことより、まず一歩を店頭に置くことを優先する。それが結果的に、いちばん確実な進み方でした。
03START何を取り決めるか — 覚書で決めておく4つのこと
委託販売を始めるとき、口約束のまま商品を預けるのは避けてください。私たちも、預ける前に必ず覚書を取り交わすようにしています。大げさな契約書でなくてかまいません。決めておくべきは、次の4つです。
- 卸値と小売価格の決め方 — 卸値はこちら(日本側)が設定し、小売価格は店が決める。これを最初にはっきりさせます。フランスでは店頭価格が卸値のおおよそ2〜2.5倍になるので、こちらが動かせるのは卸値だけ、という前提を共有しておきます。
- 支払いのタイミング — 注文が入って商品が売れたら、その分の卸値を店からこちらに支払う。委託なので、売れる前にはお金は動きません。この「売れてから払う」という流れを、文面で確認しておきます。
- 期間 — いつからいつまで預けるのか。期間を決めておかないと、売れ残ったときの扱いが宙に浮きます。
- 売上の集計 — どのくらいの頻度で、何が何点売れたかを店から知らせてもらうか。ここを決めておかないと、こちらは店頭で何が起きているか分からなくなります。
私たちの場合、以前に別の商品でつくった委託販売の枠組みを下敷きにして、この覚書を用意しました。そして日本語とフランス語の2言語で作り、現地のネイティブに表現を確認してもらってから、双方で署名します。「お金の流れも支払いのサイクルも何も決めていない」まま預けてしまうと、後で必ずどこかでつまずく。だからこそ、預ける前のこのひと手間を省きません。
04AGREEMENT在庫を持たない「受注発注」という売り方
委託販売と相性がいいのが、受注発注という売り方です。あらかじめ在庫を作って預けるのではなく、お客さんが選んでから作る形です。
先ほどの書道家の作品では、こういう形になりました。店頭にはサンプルを置いておく。お客さんは、それを見て「書いてほしい漢字」を選ぶ。注文が入ってから、作家がその漢字で作品を制作する。制作は、複雑な字でなければ1週間ほどで仕上がります。
この形の良いところは、在庫を抱え込まなくて済むことです。作り置きの在庫が売れ残るリスクがなく、お客さん一人ひとりの希望に合わせた一点ものが作れる。手仕事の商品や、注文ごとに内容が変わる商品とは、特に相性がいい。
もちろん、その場で持ち帰れないぶん、お客さんに待ってもらう必要はあります。けれど「自分のために作ってくれる」という体験そのものが価値になる商品なら、この待ち時間はむしろプラスに働きます。委託販売でサンプルを置き、注文が入ったら作る。在庫リスクを両側から小さくできる、理にかなった組み合わせです。
05MADE-TO-ORDER店の助言から、一番売れる商品が生まれることもある
委託販売を続けていると、思いがけないことが起きます。店側の助言から新しい商品が生まれ、それがいちばん売れる、ということが起こるのです。
あるカシミヤブランドの商品を、パリのテーラーに扱ってもらったときのことです。きっかけは、こちらの提案ではなく、店のオーナーからの一言でした。「メンズのテーラードジャケットを作れば、フランスでは確実に売れる」。現地でお客さんを見ているオーナーだからこその読みでした。
そこから開発が始まりました。厚手のカシミヤで、フランス人の体型に合う仕立て。サンプルをオーナーに見てもらい、細部を詰めて仕上げていく。そうして出来上がったジャケットを委託販売で店頭に置いたところ、これが評判を呼び、次のシーズンも同じ形で、という継続の受注につながりました。
ここで大事なのは、この商品が「こちらが日本で考えた売れ筋」ではなく、「現地の店の助言から生まれた」ものだったということです。現地でお客さんと接している店ほど、何が売れるかを知っています。委託販売でその店と関係を築いておくと、店の助言が新しい商品を生み、それがまた売れていく。売り場を借りるだけでなく、現地の目を借りて一緒に商品を育てる——委託販売には、そういう効き方もあります。
06CO-CREATIONまとめ
海外の店に商品を置いてもらう現実的な入口は、いきなりの買取ではなく、委託販売です。在庫リスクをこちらが引き受けることで、店側の「売れなかったら」という不安を先に取り除き、最初の一歩を軽くする。 これが委託販売の芯です。
始め方は、サンプルを1〜2点預けて反応を見るところから。預ける前には、卸値・小売価格・支払いのタイミング・期間・売上集計の4点を覚書で決めておく。在庫を持たない受注発注と組み合わせれば、リスクをさらに小さくできる。そして続けていくうちに、現地の店の助言から新しい商品が生まれることもあります。
フランスで委託販売できる店を探したい、まず何から始めればいいか相談したい——そんな方は、無料相談からお気軽にお問い合わせください。パリ・南仏での委託販売の経験をもとに、あなたの商品に合った始め方を、一緒に考えます。
よくある質問
Q.委託販売と買取、どちらから始めるのがいいですか?
海外の店に初めて置いてもらうなら、まずは委託販売から始めるのが現実的です。買取は店側が仕入れの時点で在庫を抱えるため、実績のない海外の商品にはなかなか踏み込んでもらえません。委託販売なら、売れた分だけ支払う形なので店側のリスクが小さく、「まず置いてみましょう」と言ってもらいやすくなります。委託で反応を見て、売れ行きが見えてから買取に切り替える、という順番が自然です。
Q.委託販売の手数料の相場はどれくらいですか?
委託販売では、こちら(日本側)が卸値を決め、店側がそこに自分の利益を上乗せして店頭価格を付けます。フランスの場合、店頭価格は卸値のおおよそ2〜2.5倍が目安です。つまり店側の取り分は、決まった「手数料率」というより、卸値と店頭価格の差として決まります。こちらが受け取るのは卸値そのものなので、まず「その卸値で自社の採算が合うか」を先に確認しておくことが大切です。
Q.委託販売で商品が売れ残ったら、どうなりますか?
委託販売では、売れるまで商品の所有権はこちら側に残ります。そのため、売れ残った場合の扱い(返却するのか、期間を延ばして展示を続けるのか)は、あらかじめ覚書で決めておくのが基本です。ここを曖昧にしたまま預けると、期末に「この在庫はどうしますか」でつまずきます。預ける前に、期間と売れ残り時の扱いを文面にしておくことをおすすめします。
Q.海外の店に置いてもらうのに、契約書は必要ですか?
大げさな契約書でなくても、覚書は取り交わしておくべきです。口約束で預けると、卸値・小売価格・支払いのタイミング・期間・売上の集計といった基本が人によって認識がずれ、後でもめます。私たちも、預ける前に「卸値はこちらが設定し、小売価格は店が決める」「注文が入ったら卸値を店からこちらに支払う」といった最低限の取り決めを覚書にして、双方で署名してから始めています。
Q.覚書や資料は何語で用意すればいいですか?
フランスでは、フランス語で用意するのが基本です。英語が通じる相手でも、営業資料も覚書もフランス語を主にしたほうが話が早く進みます。覚書は日本語とフランス語の2言語で作り、双方が同じ内容を確認できる形にしておくと安心です。翻訳は直訳ではなく、現地のネイティブに一度目を通してもらうと、表現のずれを防げます。
SITEN — France Market Entry
フランス販路開拓を、現地で動く体制で。
この記事の内容を、パリ常駐チームが実務として代行します。戦略設計から現地商談・成約フォローまで一気通貫。
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SUGAR編集部
パリ・南仏で日本ブランドの現地販路を担ってきたSUGAR編集部が、複数の委託販売の現場をもとに構成しています。


